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手術を決めた瞬間 建築的考察

「工学的一般論から側弯症を考えます。 その結果として「なぜ娘に手術を受けさせたのか」を書いたレポートです。」(女性会員の父親)

■概要

工学的一般論から側弯症を考えます。
その結果として「なぜ娘に手術を受けさせたのか」を書いたレポートです。見慣れない単語が在りましたら中学か高校の理科の教科書を紐解いてください。


■目的

側弯症の患者、家族の方で手術か整体かを悩む人が多いようです。
このレポートが悩み解決の参考になればと思います。


■背景

私は建設会社勤務の技術職、専門は電気。

H9年秋娘(小6)が側弯症26度と指摘されました。
その後半年程整体に通院。毎週1回 5600円 30分程度の治療。
改善見られず。

H10年春(中1)学校の勧めで慶應病院、この時点で47度
側弯症進行率70%との説明を受ける。

H10年夏(中1)鈴木信正先生の手術を受ける。

H13年現在は高校1年生 山岳部に入っています。
柔道、剣道、マラソン何でもOK、運動の制限は受けていません。
元気に高校生活を楽しんでいます。


■工学的一般論

「モノが曲がるとはどの様なことか」から考えてみました。
モノが曲がる要因は外力と内部要因の2つが考えられます。
1:外力とは外からの力のことです。
外から力を受けるとモノ自身が変形します。
変形と外力は概ね比例し、変形は弾性、塑性、破壊と進みます。

 弾性:変形するが外力を取り除くと元に戻る
 塑性:外力を取り除いても変形が残る
 破壊:壊れる

外力は力の掛け方によって静的、衝撃、長期(クリープ)に分類されます。

 静的:一般的概念の力、静かに加わる力のこと
 衝撃:物を落とした時、衝突した時などの力のこと
 長期:絨毯に箪笥の跡が付くような力、いわゆる「癖が付く」こと

「癖が付く」とは時間経過と共に弾性が失われる現象です。
そのメカニズム、時間との関係はまだそれほど明確になっていません。
経験的には時間経過と弾性は単純な比例では無さそうです。
ある期間、弾性を維持しその後徐々に弾性が失われる感じです。
弾性を失いだすタイミングは弾性を維持した累積時間が関係していると考えられます。

長期とはモノの寿命によって時間の単位は異なりますが、ここでは年単位になります。


2:内部要因とはモノ自身に原因があることです。

動きのあるモノは大きく区分すると駆動部と制御部とセンサーで構成されています。
 駆動部分:直接動きを作る部分(例えばエンジンルームの中の装置)
 制御部分:動き方を制御する部分(例えばハンドル、アクセル、ブレーキなど)
 センサー:制御に必要なデータを作る部分(例えば運転手)
異常の原因は主として設計の間違いと部品の故障の2通りあります。
 設計を間違えると予定外の動きをします。
 部品が壊れると異常音、異常振動、臭いなどの症状が現れ最後は機能停止です。
異常な動作には2つの種類があります。
 直接的異常:駆動部が故障してその他は正常な場合
       例えばエンジンが故障で車が動かない状態です。
 間接的異常:駆動部は正常でその他が故障している場合
       例えばガス欠で車が動かない状態です。


■状況分析(工学的一般論を側弯症に当てはめてみました。)

1:側弯が外力で発生したと仮定したらどうなるか?

S字の場合

上下方向に位置の異なるS字の凹部分へ左右同時に力が加わったことになります。
背骨は壊れていないので、弾性領域までの力でしょう。
(塑性領域以上の力を受ければ強烈な痛みを伴うか骨折します。)
弾性領域の力で変形を発生させるのは長期です。
何らかの要因でそんな状態が長期間続いていたと思えますか?
背骨にS字の変形を誘発させるような左右同時の力の存在は非現実的です。
くの字の場合
くの字の凹部分に力が加えられたことになります。
S字と同じでその様な力が存在すると考えるのは非現実的です。
よく姿勢の悪さが指摘されます。
そこで上半身と背骨の関係を上半身の中央に背骨があると単純化します。
後は実験です。
自分でいろいろな姿勢をしてその時の背骨の形状を書き出します。
すると、面白いことに気付きました。
身体をいろいろ曲げたりひねったりしても上半身はあまり変形していません。
腰が大きく曲がっていました。
意外と背骨は真直ぐになっています。
残念ながら「くの字」を誘発する姿勢は見つかりませんでした。

「癖が付く」の面から考えてみます。
「癖」を発生させるためには力を受けた時間の累積が必要です。
途中で累積がリセットされれば振り出しに戻ってしまいます。
リセット:力が消えた、方向が変わった等状況の変化
ギブスも無く、全く同じ姿勢を年単位で継続出来ると思いますか?
「仮説の導く結論が非現実的なら、その仮説は違っている」と言う論理に従って、
外力および姿勢の悪さが側弯の原因とは成り得ない」となります。


2:内部要因としたら何が原因か?

遺伝は関係ないとの事ですから設計は除外出来ます。
痛み、発熱、などが無いので駆動部分の部品は除外できます。
再現性が無いようですから制御部分も除外できます。
残るはセンサー
そこで、背骨がどうやって角度0(垂直)を維持するのか考えました。

建築では「重りの付いた糸は垂下する。」という自然現象を利用しています。
実際は建てた柱の上部から重りの付いた糸を垂らします。
糸は垂直になるので、柱を糸と平行に調整します。
これを繰り返すことで建物全体を垂直にしていきます。

細胞だって大きさに誤差を持っていると思います。
ですから、「単純に細胞を積み重ねれば垂直になる」とは思えません。
建築と同じ何らかの基準が有るはずです。

では、何を基準にしているのか?
総ての細胞が共通して持てる一つの基準。
それはおそらく・・・「重力」
細胞内の何かが重力を感知しているのではないでしょうか。
重力センサーとすれば感知部の異常、信号系の異常、通信系の異常が考えられます。
 感知部:重力を検出する機能
 信号系:検出データを見える形に変換する機能
 通信系:見える形のデータを送信する機能

さて何処に異常があったのか?
ここから先は私の知識不足で推論出来ません。


■理論的帰結

1:手術か整体か

側弯症の原因が内部要因となれば細胞単位のミクロの話です。
原因が明確にならないと薬での治療は出来ません。
外科的治療が残ります。
曲がったモノを直線に戻すには逆方向に力を加える必要があります。
「外力が側弯の原因とは成り得ない」

 

 

「日常身体が受けている程度の力では側弯にならない」

 

 

「整体は塑性領域以下の力による治療である」

 

(整体で骨折したら大変です)

 

 

「整体では側弯を生成できない」

 

 

「側弯を生成できないなら逆側弯も生成できない」

 

 

「逆側弯を生成できなければ、大きな背骨の曲がりを真直ぐには出来ない」
結論、「整体は側弯症を治せない」


■側弯進行確率が高い場合の対策

手術の危険を避けてそのままにすれば、いずれ2次的な重い病気を誘発するとの事。
2次的要因での病気の発生率:非常に高い
整体での背骨修復率    :0(治らない)
鈴木先生チームの手術危険率:非常に低い
娘の場合、残った治療方法は手術しかありませんでした。


■まとめ

一般的に未経験な事柄にぶつかると、「初めに聞かされたことを信用しやすい」という思考パターンがあります。側弯症もそんな事柄の一つでしょう。

  言葉巧みにしゃべられてなんとなく納得してしまう
  そして反対意見が耳に入らなくなる
  気が付いたときは取り返しのつかない時間的ロスを後悔している

そんな失敗を繰り返さないために、このホームページと「あやめの会」があります。初めて側弯症に出会った方、五里霧中で右往左往の状態でしょう。このHPをよく読んで「あやめの会」で勉強しましょう。必ずトンネルの先に明かりが見えてきます。

側弯症対策の理論的根拠を明確にしたら、後は鈴木先生を信じて全てを託し、きょろきょろしないことです。

以上
ドキュメントアクション