脊柱側弯症の話 - 装具治療が必要な方々のために (B-8 適応)
あやめの会 会報2号(平成5年発行)に掲載された寄稿より
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正
B-8 適応
装具療法は、どういう人で必要となるか? どういう人で効果が期待できるか?
装具療法の対象となる人は、1.側弯が25゜~30゜以上で45゜以下、2.成長がまだ1年半以上残っている、3.特発性側弯症、症候性側弯症の一部、の全てに該当する人です。
25歳で35゜の人に「随分曲がっているな、何とかして上げたいな。」と、装具療法をしてもまったく無効です。12歳で35゜の特発性側弯症の人では装具療法の対象となります。12歳で50゜の側弯に装具療法が適応になるかというと、これはやってもまったく無効です。100%進行します。そして、装具は効かないので手術をした方がよいと判断することが、治療法の適応を決める事であり、医師の非常に大事な仕事になります。
側弯症にも色々な種類があり、遺伝性疾患の為の側弯、例えばマルファン病、レックリングハウゼン病などに伴う側弯症を症候性側弯症と呼びます。これらも装具療法の対象となりますが、装具をしても進行してしまう場合が少なくありません。特発性側弯症は装具療法で効果が期待できるものの第1です。
装具療法の適応にならないものの1つは先天性側弯です。骨に先天奇形があっての側弯ですので、装具をやってもその部分の側弯を治す事は絶対にできません。但し、部分的な適応として先天性側弯で先天性奇形がない部分に、代償性の側弯が生じているとき、その弯曲をコントロールする為に装具療法の適応となる事はあります。
角度的には、どうなのかと、ここが非常に意見が別れる所です。従来20゜を越えたら、装具療法と言われていましたが、これは間違いであると言えます。現在は、30゜以上が進行の確率が75%だから、30゜前後で装具を開始するのがコンセンサスです。
ただし、肋骨の変形が著明な場合は側弯が軽くとも装具を開始することがあります。側弯の変化がなくても肋骨の変形が進んで来る事があります。そして、側弯症の症状の一つの背中の隆起は肋骨の隆起であり、それが外見上一番問題の変形であるからです。
20゜、25゜の人全員が本当に装具が要らないかというと、そうではありません。その第1が心臓に奇形がある人です。心奇形のある方の側弯症は通常、進行性であり、しかも進行が早いとされているので、仮に初診時が20゜次に25゜となった場合には、装具を開始した方がよいと言えます。
患者さんに目立つ、側弯症の1番の症状は外観上の問題です。この外観上の問題を治すのが、患者さんにとっては本来の目的であると言ってもいいと思います。背骨が横に曲がる事からもたらされる健康に対する害悪を取り除けはいいと言うのが、我々の考え方ですが、患者の身になれば、外観を何とかして欲しいという希望を叶えてあげるのが治療でないかと思います。モアレ写真の解析から、側弯は20゜であるけれども肋骨変形の度合いは 35゜や、40゜の側弯に相当するという方も非常に多くいます。そういう方にはレントゲンからの適応決定ではなくて体幹変形というものの総合判断から装具療法をした方がいい、という判断が出る場合もあります。私は肋骨変形の矯正という意味で、患者さんが装具が絶対嫌だと言わないかぎり、装具を進めて行く事も増えて行くと思います。