脊柱側弯症の話 - 装具治療が必要な方々のために (B-7 保存的治療法)
あやめの会 会報2号(平成5年発行)に掲載された寄稿より
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正
B-7 保存的治療法
代表的な保存的治療法は装具療法です。16世紀~17世紀以来、色々な装具が開発されてきて、おおかたは何の効果もない、またその矯正効果を合理的に確認することもなく、ただやってきたといえますが、それを一変させたのがミルウオーキーブレースの開発でした。ミルウオーキーブレースというものは、鉄製の首輪を、前に1本、後ろに2本の支柱で革製、あるいはプラスチック製の骨盤帯につなげその間にセットしたパッドで側弯を矯正する装具です。
次にアンダアームブレース、すなわち脇から下だけの部分の体を覆って矯正する装具です。ミルウオーキーブレースですと、体の外に出る部分があるために患者の受け入れが、非常に悪い、皆つけるのを嫌がるという事があります。特に学校に行って、機械人間と呼ばれたとか、スポーツをやる時に人を傷つける可能性があるとかで、日本の社会では非常に制約が多い装具と思います。それでその制約を取り除く意味で体の外に出る部分を非常に少なくしようという事で、脇の下からだけの体を覆うアンダーアームブレースないしはボストンブレースというものが開発されました。私の外来ではほとんどの患者さんの装具はアンダーアームブレースです。
その他の保存治療でも色々なものが上げられます。電極を体内にに埋め込む、あるいは皮膚に電極を貼って、電気刺激を与えて筋肉を鍛えることで矯正するという電気刺激法がもてはやされましたが、効果がさほどないとの事で現在は廃れています。結局、側弯症の原因は、骨が悪いのではない、筋肉が悪いのではない(筋肉が悪いのは2次性変化である)、栄養、環境なども-切関係ないという事が確定して、種々の研究から、特発性側弯症の原因としては中枢神経系で何らかの機能障害が起こって、それの為の2次性変化ではないかと言う事に現在至っております。
そう言った結論から見ると筋肉をいくら鍛えても効果がないという事が明らかであり、従って、体操で側弯を予防しよう、体操で側弯を直そうというのは、まったく間違いです。ですから体操をいくらやっても、側弯に対しては何の影響がない。但し、装具療法をやっている場合に筋力低下を補うと言う意味での体操、そして深呼吸が重要な意味を持っています。