脊柱側弯症の話 - 装具治療が必要な方々のために (B-9 装具の受入れ)
あやめの会 会報2号(平成5年発行)に掲載された寄稿より
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正
B-9 装具の受入れ
側弯症集団検診の後に「側弯がある」と言われた時は、ガンの告知と似たような状況にある、と教育関係者は理解すべきです。姿勢が悪いから、側弯になったんだとか、姿勢を良くしていれば側弯が治るとか、間違った事を平気でいう人の方が圧倒的多数な現状では、このような理解がされないと、子供に取って非常に精神的負担を与えるのが問題です。装具療法をやっていた人達を、大人になってから精神分析をした結果、精神的な傷跡が少なからず残っているという結果が出ています。それでも装具が必要であるところが、種々の配慮を要する所以です。
装具が必要となった時、その受入れ方に3つあります。さらっと、のほほんとして作り、受け入れて行く子、自分は、しょうがない、やらなくては、いけないんだな、と気丈な子、絶対嫌だよと、はなから拒否する子と、大きく分けて3つの反応があります。
のほほんと受けた子(母親)は、実際、装具ができ上がると「わ-、こんな物を着けるの?、こんなのつけるの大変だ-」と、これはごく一般的な反応です。ごく一部は、確信犯で、絶対嫌だという子がいます。これは無理やりつけろといっても無駄で、家庭内の騒動、不和、家庭内暴力とかになってしまう可能性がありますから、そういう子には無理やり押しつけないで、自然経過をみていかざるを得ません。運がよければ2~3割の確率で進行しないと言う事もありますから、定期的にきちんとチェックしていき、進まなかったら、運が良かったね、進んだらまた考えましょう、とするより仕方ありません。
私つけるよ、という子では治療は非常にやりやすくなります。一方、のはほんと、何となく装具を始めたけど、やっぱり嫌だという場合、また、とてもずるい人もいて、つけている振りをして、まったく最初からつけていないという方も結構多くいます。それを見極めるのは難しいので、私の考え方としては、無理やり「つけないとどうかなっちゃうよ」と脅かす事は子供に対してしない方が良いと思います。子供が自分の意志で、絶対いや、といった場合にはそれも尊重して上げる余裕もあっていいと思います。
装具療法の受入れでは、それまでの家庭内のしつけにも関係があるのではないかと思います。何が大事な事かきちんとした判断力を育てる事、しつけをしてきたかどうか、これはひいては、両親のものの考え方に大きく影響されます。やはり、両親がしっかりしていない場合には、いくら子供に装具をつけろと言っても無駄な話になってしまいます。ですから、患者本人だけではなく、その御家庭全体の問題であると思います。
一番の問題は、装具を作ったけれどあまりつけない、そのうち「こんなのつけるのやめた」と言って、それっきり病院に通うのを止めてしまう、そういう方がいます。これは、やはり子供の将来の健康という点からは一番悪い事です。装具は全然つけなくても定期的な観察をきちんと受けることが大事なのです.装具を無理強いするという事はせずに、定期的に診察に行く事だけは守る、という事が親御さんの養育上の義務ではないかと思います。