脊柱側弯症の話 - 装具治療が必要な方々のために (B-5 自然経過と民間療法)
あやめの会 会報2号(平成5年発行)に掲載された寄稿より
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正
B-5 自然経過と民間療法
集団検診で10゜位、15゜位の側弯が見つかるとお母さんがパニックにおちいって大変だ大変だとなります。私の所にいらしたとき、何もしなくてよい、経過を見て行くだけで良い、普段は側弯を忘れていてかまいませんよ、と言っても動転したお母さん達はそんな話は信じられないようです。そうしますと周りには、矯正だ、整体だ、なんとか式バントだとかで治るという、色々な人が沢山います。そちらに心を奪われる方が非常に多い、大多数がそう言う方ではないかと私は思います。そういう方達が、民間療法の方が効くんだと言っている場合に、25゜未満の側弯では放っておいてもいても進行しない確率が8割あるということは全く頭にありません。自然に10゜以下になる場合すら1~2割あります。ですからそういう方だったら毎日、オレンジジュースを飲んでいればオレンジジュースのおかげで側弯症が進行しなかったと言える訳です。そういった理論が行われているのが、民間療法です。民間療法と言うものは何の意味もない、自然経過というものをまったく理解していなくて効いた効いたという、また効いたと信じるものです。そういうものを信じる方は、何かの新興宗教の信者様と同じであって、もはや何をいっても無駄なので、そういう方は、そういう所で自分の世界に閉じ込もるのも仕方がないと私は考えております。しかしながら、思春期に 60度以上の側弯のお子さんに、正しい治療の機会を与えず、民間療法を続けることは、子供に対する罪悪であるといっても言い過ぎではありません。