脊柱側弯症の話 - 装具治療が必要な方々のために (B-3 側弯症の自然経過)
あやめの会 会報2号(平成5年発行)に掲載された寄稿より
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正
B-3 側弯症の自然経過
一つの病気での自然経過、放って置くとどうなるのかと言う知識がない限り、ある治療法が効果があるとか、ないとかという判断は出来ません。今までの大きな誤解は、側弯症は全てが進行性である、そして発育が止まったら進行しないと言われていたことです。50~60度となった側弯もあるときは10度の時があったわけです。それでは10゜の側弯にはみな装具療法をやれば手術が、予防出来るのかというと、全てが進行性のものではないので、何もしないでも進まない人達にはやり過ぎになる訳です。従って、どの様な側弯に装具療法を始めるのが最も合理的なのか考えなければなりません。言い換えれば、放っておくと進行する確率の方が、進行しない確率よりも高いときが、装具療法を開始するときであるといえます。
現在までの研究から、思春期側弯症の自然経過はかなり解明されています。問題は、ある側弯が進行する確率がどれ位なのかという事が一番重要なのです。簡単に言いますと、30゜未満の側弯の場合、進行する確率が2~3割、放っておいて自然に治る確率が2割、放っておいても進まない確率が6~7割と言えます。
ところが思春期に30゜以上になった場合には進行する確率が75%、しない確率は25%以下という結果が出ています。この辺が治療の適応の根拠になります。
そして40゜以上の思春期側弯症であれば進行する確率が95%、そして40゜以上の側弯は成長が終わっても進行する確率が3割程残っている、すなわち成長が終われば進行しないという、今までの考えが間違いであるという事が明らかになりました。成人でも60度以上の側弯では進行する確率が75%あります。
私の患者さんでも、装具を6年つけて18歳で終了、以後経過を見て21歳までは42~3゜だった人が24歳で58度に進行していて手術になった人もいます。装具が終わったからといって必ず進行しないという事もないのです。要するに側弯症の自然経過としては30゜未満の軽度の側弯は進行しない確率が7割位ある、30゜を越えると進行が75%あるという事が自然経過として大事な事です。