脊柱側弯症の歴史と手術の実際 (C-2 脊柱側弯症とは)
脊柱側弯症の歴史と手術の実際
済生会横浜南部病院 整形外科部長 小野俊明
C-2 脊柱側弯症とは
脊柱側弯症については、鈴木信正先生が本会誌第1号で詳しく述べておられますので、ここでは簡単に要約しておきます。
脊柱側弯症とは、いわゆる「背骨」が正面から見て側方に弯曲し、弓状、時にはS字状を呈する病気です。原因は、先天的に骨の形態異常があるもの、神経、筋 肉、結合組織の病気に伴うものなど一部は解っていますが、全体の約7割を占める「特発性側弯症」については未だ不明です。
特発性側弯症では、一般に思春期(女性では初潮の前後2年位の間)に弯曲が増大する傾向があり、また弯曲の程度が大きければ大きい程悪化する確率が高いこ とが解っています。年齢が15才未満で側弯度が30度以上になると、約7割の人が進行します。進行し50度を越えると、体幹の変形が際立つだけでなく、心 臓や肺にも悪影響が生じます。
前述したごとく、病気の原因が不明な現況では完全な予防法や根治的治療法がないため、早期発見、定期的診察、早期治療が最も重要です。姿勢矯正や運動療法、 民間療法などの効果がないことは既に確立した事実です。どうしてもと言うことであれば試してみることは自由ですが、そのことに固執し、私どもの病院への定 期的診察をおろそかにしたために、適切な治療時期を逸する患者が少なくないことは悲しむべきことであります。一部のマスコミの誤った報道や世間の無理解の 問題と同時に、私ども医療サイドの啓蒙が不十分であることを反省させられます。