脊柱側弯症の歴史と手術の実際 (C-1 はじめに)
脊柱側弯症の歴史と手術の実際
済生会横浜南部病院 整形外科部長 小野俊明
C-1 はじめに
あやめの会が発足し早6年を経過し、本会誌も第3号発行となりましたが、今回あやめの会より原稿のご依頼を頂き、僭越ながら筆を取らせて頂くことになりました。
この会報を読まれる方は、側弯症で治療中のご本人とそのご親族が殆どかと思いますが、皆様とも今後のことに少なからぬ不安を感じていることと思います。不 安が尽きない理由の一つは、脊柱側弯症と言う病名を耳にしたことがあるが、その疾患についての情報が少なくよく解らない、また周囲の人、民間療法師、医者 で、時には医者の間でも言うことが違うといった混乱があるためではないでしょうか。
実際、脊柱側弯症の専門家は未だ少数である上に、我々専門家にもまだまだ解っていないことが沢山あります。例えば、側弯症の多くを占める特発性側弯症 (一般的に病気の原因が不明の時に「特発性」と言う病名を付ける)のはっきりした原因は未だに不明ですし、側弯の変形の程度が今後悪化するのかこのまま止 まるのかについても、ある程度確率的には解っているものの、個々の患者がどうなるのかの予測は大変難しいといったことがあります。しかしながら、側弯症の 病態の解明や治療法はここ4半世紀の間に飛躍的に進歩してきたことも事実です。