脊柱側弯症・検診と事後管理をめぐる諸問題 - A5 モアレ外来 <モアレ法とは?>
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正先生 (あやめの会会報1号(平成2年発行)に掲載された寄稿より)
脊柱側弯症・検診と事後管理をめぐる諸問題
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正
A-5 モアレ外来 <モアレ法とは?>
モアレ外来とは、経過観察だけを要する側弯症患者さんの経過観察を、レントゲンを使わずに行う外来です。
モアレ法は、光の干渉縞を応用して物体の表面形状を3次元に計測できる方法であるが、この方法を用いることにより、側弯症によって生じた体幹部の変形状況を計測することができる。
側弯症の診断には、X線検査が必要不可欠であるが、側弯症の経過観察をして行くのには、通常年3回から4回のX線検査が必要となる。
患者に、X線検査を行うというと、「この間レントゲン検査を受けたばかりだが、大丈夫だろうか?」という質問を受けることが多い。実際には、年に3~4回程度のX線検査の被曝線量では全く問題はなく心配もないが、できるだけ被曝線量を減らすにこしたことはない。
そこで、このモアレ法を補助手段として併用すれば、X線検査を年1回減らすことができる。モアレ法で写真を撮ることは、普通の記念写真の撮影と同様であるが、その判定のためにはフィルムを投影して計測するか、印画紙に焼き付けて計測しなければならない。しかし、われわれは、このモアレ写真をコンピュータで解析し、側弯の進行の有無を判定する方法を1976年以来研究開発を行って、1986年、世界に先駆けて臨床応用への実用化を行った。
現在、このモアレ法以外にもX線検査に代わる方法は考えられているが、実際に外来でX線検査に代わるものとして用いられているのはわれわれ病院以外にはない。
モアレ外来の開始以来3年が経過したが、その結果は極めて良好であり、X線検査の回数を大幅に減らすことができている。
もっとも、モアレ法では、体幹部の変形の評価はできるもののX線と違って骨の状態がわからないため、装具治療中の患者や手術後の患者の場合にはモアレ法とX検査と併せて行うことにしている。