脊柱側弯症・検診と事後管理をめぐる諸問題 - A2 脊柱側弯症とは?
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正先生 (あやめの会会報1号(平成2年発行)に掲載された寄稿より)
脊柱側弯症・検診と事後管理をめぐる諸問題
東京都済生会中央病院 整形外科部長 鈴木信正
A-2 脊柱側弯症とは?
背骨(せぼね)は、医学用語でいう脊椎と脊柱の両方を示す。
脊椎は、一つ一つの背骨であり、頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎が5個、それに仙骨、尾骨がある。そして、これらの繋がりが体の真ん中にあって脊柱となり、体を支えている役目をしている。
この脊柱は、横から見るとゆるやかなS字状に弯曲している。しかし正面から見ると真っ直ぐである。これは、弓を横から見るとアーチ状をしているが、正面から見れば真っ直ぐに見えるのと同じことである。
脊柱側弯症とは、脊柱が正面から見て横に弯曲している状態をいう。もっとも、人間の体には個人差があるので、脊柱の少々の曲がりはその大部分が正常範囲内である。すなわち、成人の場合、側弯が30度以内であって、脊椎やその他に明らかな異常がなければ、健康にまったく影響がない。
次に、側弯症には、原因となる病気のあるものと、原因が全く不明のものがある。
このうち、原因のわからないものを特発性側弯症と呼んでいるが、これが側弯症全体の70%を占める。また、脊椎に生まれつき奇形があって側弯を生じているものを先天性側弯症と呼ぶ。この他、例えば、マルファン病、レックリングハウゼン病などという難しい病気などに伴った一群の側弯症を症候性側弯症と呼んでいる。
症候性側弯症の一部には、遺伝性のものがあるが、先天性側弯症には遺伝性はない。また、特発性側弯症も遺伝性は明かでない。
特発性側弯症の原因については、数10年前から世界中の専門家が研究しているが、いまだに明らかにされていない。ただ、現在のところはっきりしていることは、環境因子、すなわち食事や栄養、姿勢、生活習慣、運動等は一切側弯症の発生に無関係であるということである。
よく姿勢が悪いと側弯になる、一方の手ばかりでカバンを持つと側弯になる、などいわれているが、これらは全くの誤りである。また、体操をして側弯を予防しようなどといわれることもあるが、これも誤りである。
特発性側弯症は、脊椎の発育が最も活発となる思春期に発生するものが最も多いが、その原因がわかっていないために予防は不可能である。したがって、早期発見をして対処することが最も大切である。